なぜ子どもに英語なのか―バイリンガルのすすめ (NHKブックス)

丸善ライブラリー『バイリンガルの子供たち』も面白く読んだが、この本は近年低年齢化ばかりが進む日本の英語教育に関する論争のなか、早く始めて害になるわけでもなし、とバイリンガルのすすめを説く本である。早期からの英語教育の是非、「バイリンガル」ということについて、バイリンガルの人々の心や行動、能力、第二言語習得などについて今までになされてきた研究を紹介し、豊富な実例をまじえつつ述べてゆく。それによると二言語を習得して知能に悪影響、という論が最初はあったが、近年それは修正され、むしろ異なる言語を使えることによって、語の恣意性に気づくなどことばそのものに敏感になったり、柔軟な思考ができたり、ということもあるらしい。英語がもはや世界共通語になっているのは現実であり、英語ができたら読める本も格段に増えるし、海外の大学で非常に充実した教育を受けられる。豊富な実例も興味深い。『バイリンガルの子供たち』で出会った著者の子供たちのその後もわかっておもしろい。外国語教育に前向きになれる本。英語以外のものすら学んでみたくなる。また、いろいろな国の言語の使い方もおもしろかった。たとえば、公用語がＡとＢだからといって国民が大体ＡもＢも喋る、ということではないのだ。また、バイリンガルが言語をどうやって使い分けしているか、というのも面白い点だ。時には仲間意識、時には策略（というと大げさだが）にもなりうる。筆者は現在、小学校で英語を教えるにあたっての教員の不足も論破しているが、この点は私は一般論に同調する。せっかく耳のよい小学生に、絶対にアメリカ人に聞き返されてしまうようなカタカナのままの英語が植え付けられては大変だ。