ナポレオン戦線従軍記 (中公文庫)

１８歳でイタリア戦役に従軍、以後４５年間軍人として激動のフランス革命時代を生き抜いた男が書き留めた貴重な歴史資料である。ナポレオン軍として参加した多くの戦闘、自らの感想や周囲の噂話し、当時の世論などを日記に残している。それだけに博物館で本物を鑑賞するような気分を味わうことができ、タイムスリップしたような錯覚を起こさせてくれる。著者はイタリア・エジプト戦役、アウステルリッツ・イエナなどの戦い、スペイン戦役などナポレオンの元で戦っているが、ロシア遠征には参加していない。冷静な目で物事を見ており、ナポレオンは自らの野心のためにフランス国民を引きずりまわしたと断言し、ワーテルローの戦いではブルボン王家に忠誠を誓っている。日本語訳も非常に自然で読みやすい。また各戦役のはじめに訳者の解説があり時代背景などを伝えており親切である。地図は何枚かページの途中にあるが、できれば年表が巻末にあればもっと良い。